東京情報WEB > まちづくりと建築 >中野区・豊川士朗氏:まちづくりへの提言(第一話)

全体と部分 第一話
中野区・豊川士朗氏

■鉄道の今日

私は鉄道旅行が唯一の趣味で、これまで全国各地のあらゆる鉄道を乗り歩いてきた。  

最近、地方のローカル線に乗っていて、気がついたことがある。地方の長距離普通列車が次第に姿を消してしまい、数年前にほぼ消滅した。そして、それに代わって走っているのは、レールバスと呼ばれる小型の単行列車であり、運転区間も短く「こまぎれ」運転、ワンマン運転でトイレがないものが多い。車内もいわゆるボックスシートではなく通勤電車スタイルのロングシートである。

このような、いわば路線バスのような列車に、鉄道趣味の一環として乗り込んで旅情を味わうことなど、到底できない。車内で弁当を広げることもはばかられ、常にトイレの心配をしなければならず、窓に背を向けて座るために車窓を楽しむこともできない。

こうして、○○本線という名称は、実質的に消滅してしまい、短距離ローカル線がたまたまいくつも直列に接続しているに過ぎない形になってしまったのである。実際に、JR四国では、○○本線という言い方をやめている。

確かに、それぞれの駅や列車の利用状況などを勘案すると、以前のような長編成長距離ガラガラ運転はふさわしくなく、現在のレールバス方式が最も優れているのだろう。しかも、この方式にすれば運営上運転本数を増やすことも可能で、利便性向上の可能性もある。

しかし、その代償として、栄えある「○○本線」の名称、つまりその線区全体のありようが消滅してしまったのである。少し理屈っぽく言えば、「部分最適」が全体を崩壊させてしまったのである。



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